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この日記が書かれたのは、わたしが生まれた頃くらいだ。
武田泰淳は富士山の辺りに別荘を持っていて、1年を通して行ったり来たりしていたらしい。富士日記は、この別荘に滞在しているときの生活を書いたものだ。
書かれていることの中心は、毎日の食事や、食材・備品の買い物など生活の細々したこと。余計な説明はなく、かかったお金なども、そのまま金額が書かれている。
ここから窺えるのは、素顔の生活といったものだ。別荘という高級感やおしゃれ感はない。普通の女が支えている、普通の生活。最近のインスタグラムなどに見られるような、リア充自慢や「映え」はここにはない。
夫がたまたま小説家だったので、口述筆記や原稿送付などを手伝うのも日常の一部。そうしたことを含めて、淡々と生活を進めていく女のすごさを感じる。