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自分のことを書いたエッセイは、自慢話になってしまっていることが多い。田辺聖子のカモカのおっちゃんシリーズは、旦那さんとのやりとりを描いたものだが、毎回絶妙な具合に、そこから逃れている。
作家として、とても訓練したのだろうけれど、文章にスキがなく、しかもやわらかい。やわらかいだけでなく、書き手自身の芯のようなものと、それを堅く見せないテクニックを感じる。
その時々の社会的な事象を、おっちゃんと二人で話し合いながら進んでいくのだが、成り行きも、最後の落としどころも、わたしとしてはとても納得する。物事に対するバランス感覚に納得しているのだと思う。
今生きていたら、コロナやオリンピック開催について、おっちゃんとどんな話をしたのだろうと思う。